事例で見る働き方改革(前編)
文責:ジェムコ日本経営 取締役 小倉明男
現場主体でマネジメントが変わった!「ある食品会社での事例」
【前編】
〇各社の働き方改革の現状「お世辞にも順調とはいいがたいのが現状です」
政府の指導もあり、各社で盛んに「働き方改革」活動が実施されています。労働時間の短縮につながった反面、仕事そのものが時間ありきの作業になってしまったり、理論的に無理な仕事量を与えられた現場が疲弊してしまったり、お世辞にも順調とはいいがたいのが現状です。
組織開発でいうところのハード(戦略、構造、制度、業務)にばかり焦点があたり、ソフト(人間関係、人そのもの:個性、能力、夢など)の部分がおろそかになっているようです。
そんな中、ソフトの部分に焦点を当て非常に短期間に会社のマネジメントスタイルを変え、職場のコミュニケーションが良くなった会社の事例を以下ご紹介します。
〇ある会社の社長からの相談「なにも変わらない」
ある食品会社の社長からの相談がきました。その内容は「社長として親会社から出向して社内をみると、マネジメントに問題があり、職場内がギスギスしてうまく回らなくなっていた。私が改革を進めようとしているが何も変わらないので支援して欲しい」というものでした。
〇コンサルタントを交えての本音での話し合い
今回は、工場幹部(5人)を対象に行われることになりました。まず行われたのは、“人間の特性”を学ぶこと。これは自分の持つ個性と可能性をフルに発揮できる状態をつくるために重要なことであり、二つのことを学んでもらいました。
一つは、自分の持つパフォーマンスを出せないのはなぜか、ということです。その理由としては、心が整っていない状況で部下と会話をしたり、仕事に取り組んでいることが考えられます。「何をするか」にばかりとらわれていて「どんな状態でそれをするか」がおろそかになっているからなのです。
もう一つは、結果を出すためには行動の質を上げるより関係性の質を上げるほうが効果的だということです。
このことを踏まえ、活動は下記のように進んでいきました。
<活動内容>
1.集合研修で人間の特性を学ぶ
2.1.で学んだことを実際の職場で小さなことでいいので自分で考えて実践してみる
3.コーチングを受けながら振り返りと次の実践を考えてみる
上記の2.と3.を繰り返し3カ月間で4回グループコーチングを実施しました。
コンサルタントを交えての本音でのコーチングは以下のようなものです。
他の幹部「Aさんが部下とうまくいかないのは、いつも感情をあらわにして話すから。部下が怖がって近づかないんですよ」
他の幹部「Bさんの職場がいつも混乱しているのは、Bさんが親会社の会議で良い顔して仕事を何でも請けてくるから。キャパオーバーになっているんですよ」
となかなか言えない事まで腹を割って話をしました。
その上で
Aさんは「今回勉強した人間の特性にしたがうと、心は変えることができない。それなら、態度と表情を変えて部下と接してみるよ」
Bさんの課題に対しては、Cさんが「Bさんは人が良い。親会社の会議には私も同席して断るべきことを断るよ」などなど。
多少感情的になる場面はありましたが、皆で議論して対策を立て、それぞれが主体的に行動ベースでの案を出したのです。
4カ月後には幹部たちの結束と行動が見違えるほど変わってきました。社長から「実は彼らの部下から、『どうしてうちの上司はこんなに変わったか?』と聞かれたほどです。この研修のことを話したら、『私たちにもこの研修を受けさせてほしい』と言われたんです」と教えていただきました。
この後、リーダークラスの研修も同様にやらせていただきました。社長の積極的な参画もあり、以前は考えられないような活き活きした職場になり、定量的な成果も伴ってモチベーションが上がっています。
〇自分の生き方に100%影響のある研修でした
参考までに、研修後のアンケートの生の声が以下になります。
「非常にためになった。心を整えることを意識できるようになり、自分を変えるためにどう動けばいいかのヒントが得られた」
「内容が新鮮で興味深かった。これが習慣化できれば成長につながると思う」
「感情を認知し、負の感情を持つ自分を認めた上で、心をきちんと整えて、そのとき自分にできる最高の行動をおこせるようにします」
「自分が今回開けてもらったように、自分で自分の引き出しを開けられない人の引き出しを開けてあげたいと思った」
「自分の生き方に100%影響のある研修でした」
というように、とても受講生に好評で自分の成長や変化を実感してもらっています。
以上
次回の後編は、1年後の研修を受けた対象者の変化と全体のマネジメントの変化についてです。