企業における防火・防災に関する諸問題とその対策 第1回:最近の火災状況と傾向と倉庫、工場火災について
文責:ニュービジネス開発事業部 防災技術コンサルタント(元、政令指定都市消防署長) 松田 雄治
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最近の火災状況の傾向と、倉庫・工場火災について
平成28年の統計によると、日本での総火災件数は3万6,831件、死者数1,452件でおおむね減少傾向にあります。この10年間、全体の火災発生数は、減少傾向となっていますが、グループホーム等の社会福祉施設や旅館・ホテル、病院については、多数の犠牲者がでる火災が発生しており、建設当時の防火対策問題が明らかになっています。必要な強化策として、関係法令の改正(スプリンクラー設備や、自動火災報知設備等の設置基準の強化等)がなされてきました。また、建物火災だけを見ると、総件数20,991件のうち、約54%が住宅火災であり、住宅火災件数とそれによる死者数についてもこの10年間、減少傾向にあります。消防機関も火災件数の過半を占める住宅火災と、それによる死者の減少を大きな目標としており、住宅用火災警報器の設置義務化等の施策を通じ、住宅防火対策を推進し、その効果も徐々に表れて来ているものと思われます。
ところで、こういった火災傾向の中で、最近特に注目するに値する事案があります。それは、大規模倉庫や工場(コンビナート地域の危険物施設等の工場は除く)の火災です。特に倉庫火災では平成29年2月に大規模な火災が発生しましたが、その後も各地の大規模工場で火災が発生し、大きな被害が生じています。物的損害は重大でしたが、幸いな事に、人的被害は、死者の発生もなく、物的被害と比較して小さかったためか、住宅や先のグループホーム等の死者発生事案に比べると、大きく報道されることは少なかったようです。しかし、このような大規模倉庫や工場の火災で、一時的にでもその機能を失ってしまった場合、火災による建物本体とそこに貯蔵する製品や、各種製造設備の焼損被害が極めて大きかった事はもちろんですが、さらにはその工場の機能停止したことによる2次被害も同様に大きくなります。必要な製品供給の遅れ、場合によれば必要な部品不足が他の企業の操業にまで影響することになります。それによる社会全般に対する影響は、1社の直接的な火災被害にとどまらずより広範囲まで拡大してしまうのです。
このようなことから、現在あまり議論されてこなかった、工場や倉庫についての「防火・防災対策」について、考えていきたいと思います。
次回は、工場・倉庫火災による被害拡危機の要因とその問題点についてです。
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