生産性向上・コストダウンは永遠に不滅です!| 「収益力の定着化」-第2話
文責:ジェムコ日本経営 コンサルティング事業部 奥村英夫
2.生産資源の柔構造化を活用した方法論
第1話では、「収益力の定着化」の重要性と、「収益力を定着化」させる打ち手のうち、「生産資源のロス発生のメカニズムの把握について」と「生産資源の”柔構造化”」を紹介した。今回は、「生産資源の”柔構造化”」を活用した方法論、4つのうち1つについて解説する。
<方法論―1> 生産資源のロス削減
生産のフレに対しては平準化を行う。平準化は需要の山に対し生産を前倒しすることで可能となる。
①平準化によるロス低減のメカニズム
平準化によるロス低減のメカニズムは図2-1の通りである。「生産の下ブレによる能力の遊び」が減少し、その分がロスの削減となる。また「生産の上ブレによる限界利益の目減り分」が減少し、その分がロスの削減となる。平準化により収益の機会損失がなくなり「収益力の回復」へ繋がる。
●図2-1 平準化による生産のロス低減のメカニズム
②在庫リスクと回避策
前倒しすると言うことは需要に対し見込み生産を行うことが前提となる。需要見込みは時間の経過によりいずれ実需となるが、その際見込みよりも実需が少なくなる危険性が考えられる。見込みが実需を上回るときの差は在庫リスクと言える。平準化の推進の制約はこの在庫リスクの存在と言え、この回避策が重要となる。回避策としては大きく4つが考えられる。
A) 製品の需要特性を知り、在庫リスクの少ないものを前倒し生産の対象とする
B) 需要情報を生産側も知り得る仕組みにして、こまめな生産を行うことで「需要に応じた生産を指向して」作りすぎをなくす
C) より付加価値が低い工程での在庫を行い、製品での在庫リスクを低減する
D) 標準化、融通等での転用により在庫リスクを回避する 等
③平準化推進のポイント
平準化を推進しても完全なフラットな姿などありえない。客先の納期や数量変更、あるいは生産ラインのトラブルが見込み計画を大きく狂わし「計画外の対応」を余儀なくされる。このような「計画外の対応」が曖昧であれば欠品等で客先へ迷惑がかかる。
「計画外の対応」のためには俊敏な対応力の基盤が必要である。「計画外の対応」は想定外の例外パターンが多いため、まずは人の技術・技能に依存すると言える。人の技術・技能の俊敏な調達には工程や職能の習熟範囲が限定されることは制約であり、現業、管理間接を問わず多能工化はもとより多職能工化の育成まで踏み込むことが要求される。
しかし多くの製造業では現業を中心に多能工化までは進めていても職場や工場を越えた多職能工化は不十分であり、まだまだ平準化の基盤が脆弱と言え、収益力の足を引っ張っているのが実態である。
以上
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