JEMCO通信

働き方改革

人と組織の活性化│働き方改革の本質(7)

文責:ジェムコ日本経営 取締役 小倉明男

 

今回は「働き方改革」の本質の七回目(最終回)として「成長と新しい目標設定」ということについて取り上げます。

環境変化とマネジメント

今話題になっている「電通鬼十則」を改めて読んでみました。私(58歳)にはすんなりと受け入れられる内容で「なるほど」と感心して読んでしまいました。

十則を通して大筋では「何事も夢を持って主体的にチャレンジせよ」となかなか良いことが書いてあります。

問題になっているのは十則の五番目で「取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは・・・」という内容です。

おそらく、我々の年代以上の人には受け入れられても、その下の年代には違和感があるのではないでしょうか。

特に「殺されても放すな」は今に時代にふさわしいとは言い難いでしょう。

電通広報部は「企業風土の検証・改善は重要な課題の一つで、手帳への掲載は取りやめを検討している」としています。

この電通に代表されるような世代間のギャップが、日々、社会の中で起きています。

「団塊の世代」「しらけ世代(捨て石世代)」「新人類世代」「バブル世代」「団塊ジュニア世代」「ゆとり(さとり)世代」と価値観が変わってきているのです。

日本生産性本部の「働くことの意識」調査の新入社員の働く目的の推移では、2000年に「自分の能力を試す生き方をしたい」が「楽しい生活をしたい」に逆転され、

その差は開く一方になっています。7年もとしの差があると、価値観が理解できないと言われています。

この世代間の価値観が異なる集団の中でどうマネジメントをしていけばいいのでしょうか?

マネジメントが通用しない

我々の日々の営業活動の中で、私と同じ年代の幹部から最近頻繁に相談を受けるのは「我々が団塊世代からされてきたマネジメントが通用しなくなってきた。

社員がどうしたらもっとイキイキと主体的に働いてくれるんだろう」というものです。

ある大手企業の幹部は「今まで強引にでも腕力でねじふせてきたが、最近では何を言っても動かなくなってきた。もっと現場から主体的に動くやり方がないか」とのことで、

現場のヒアリングをしたところ「冗談じゃない。人は以前の半分になり、その上○○活動をしろ、○○の報告しろと、どこに時間があるんですか、やってられません」との反応でした。

この状況はこの会社特有のものではなく、多くの会社の現状と言っていいでしょう。

バブルがはじけてから、グローバルでの競争に打ち勝つためにコストパフォーマンスを上げなければならず、経営側は人員削減とコスト改善に集中し、現場をひと塊(数字)とみて、

それぞれの人(個性や可能性)を見ることをおろそかにしてきてしまった、ともいえるのではないでしょうか。

◆今も昔も

今年のNHK大河ドラマの「真田丸」の策士で名をはせた真田幸村のお父さん(真田昌幸:大群の徳川勢を2度も破った)の遺言が次です。

ワシの策に場数などいらぬ

ワシの策に心得は一つ

軍を一つの塊と思うな

一人ひとりが生きておる

一人ひとりが思いを持っておる

それを夢ゆめ忘れるな 

 

武田信玄の有名な言葉に「渋柿は渋柿として使え。接木をして甘くすることなど小細工である」

つまり渋柿は渋柿としての良さを生かせ、無理に甘くする工夫などするなということです。

信玄は戦場にいくと気が弱くいつも情報収集ばかりしていて役に立たない武将を後方において裏切りが起きないように見張らせたら大きな活躍をしてそうです。

真田にしても武田にしても強い集団はリーダーの強いリーダーシップだけではなく、そこにいる一人ひとりをきちんと見てその個性と可能性を伸ばしていることがわかります。

◆強い集団とは

ある高収益企業の工場にお邪魔した時、会社の玄関にかかっていた横断幕の言葉が「私たちの幸せは昨日の自分よりも成長することです」というものでした。

これは素晴らしいなと思って工場見学すると、作業中の方が皆「こんにちは」と作業を中断して立ちあがって挨拶してくれるのです。

申し訳ないので「挨拶は結構ですので作業を続けてください」とお願いすると「ご挨拶するのは私たちのお給料はお客様から頂くので、

お客様がお見えになったらご挨拶しようと私たちで決めたのです」との回答。感動して鳥肌が立ちました。

強い集団とは、夢(目標)に向かって、それぞれの人がその個性と可能性をフルに発揮して、仲間と励まし合いながら、苦しい試練をポジティブに乗り越えながら、一歩一歩着実に行動し、それが習慣となり、その成長が他の人へ影響して風土・文化となり、次なる目標(夢)に向かっていきます。

それが下記にあるような図になります。

◆「働く」ということ

7回にわたる「働き方改革」の連載では、この図のそれぞれを解説してきました。これはあくまでも考え方なので、具体的にどうやっていくかはトップの方と十分話をし、

その状況とあるべき姿を踏まえて方向性を出していきます。基本的には、やらせ型ではなく、コーチングを織り交ぜながらそれぞれの世代の価値観の中で、本人の主体性を待つやり方です。

答えは一つではなく人の数だけある、ということです。

「働く」ということは、試練を克服し、運命を好転させてくれ、成長する喜びを与えてくれます。つまり、一生懸命働くことで「幸福な人生」を送ることができるのです。

摩擦を恐れ、孤立し、楽をして生きようとすることが実は「不幸な人生」を送ることになるのです。

私たちも経営コンサルタント会社として、一人でも多くの人に、自分の持つ個性と能力を発揮して一人ひとりがイキイキと働き、顧客に喜ばれ同僚に感謝されるような有意義な

人生を送っていただける一助となれるよう、使命感を持ってご支援させていただきたいと思っております。 

 

今回で「『働き方改革』の本質」の7回目(最終回)ですが、7回を通して読んでいただけると

「主体的に①夢を持った集団が ②仲間とスクラムを組みながら ③思考を変えて ④自分で考えて、自分で決めて行動し ⑤それが習慣化され力となり ⑥成長しながら次なる目標設定をして強い集団になります」

ということになります。下図の様な順でスパイラルアップして、企業風土・文化を再構築して行きます。 

 

 

 


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