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「不良を出すにはどうしたらいいのか?」
逆転の発想で不良率を約70%削減
藤倉コンポジット株式会社 岩槻工場 様



ゴムと布、金属および樹脂等の複合化製品を中心とし、卓越した複合化技術で豊かな暮らしをささえるグローバルカンパニーを目指す、藤倉コンポジット株式会社。「約2年前に各部門に品質管理チームを作りました。どのような活動を行うか検討している時、以前からお付き合いのあったジェムコ日本経営様(以下、ジェムコ)に相談をすることに。国内3工場(岩槻・加須・原町)について、今の業務の分析や改善のポイントはどこにあるのか『事前診断』をした結果、『品質管理』と『損金削減取り組み』の部分で改善の余地があるとご提案をいただき、ジェムコさんとともに改善活動を行うことになりました」と品質保証統括部・部長 横山英隆氏は言います。どのような取り組みを行ったのか、取締役 髙橋秀剛氏、精密グループ生産技術チーム・リーダー 白瀬利和氏とともにお話をお伺いしました。



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※写真右から

取締役 技術製造本部 副本部長 髙橋秀剛氏

岩槻工場 精密グループ 生産技術チーム リーダー 白瀬利和氏

技術製造本部 品質保証統括部 部長 横山英隆氏



事前審査を踏まえ岩槻工場で
「失敗コスト改善」と「品質コスト管理」の取り組みを開始



事前審査を踏まえ、まずは岩槻工場の精密グループをターゲットに、不良率を減らす「失敗コスト改善」と、品質管理の方法を見直す「品質コスト管理」の2つについて取り組みを行うことに。理由としては、製造している製品の特性上、不良率が高くなりがちだったことがあるようです。「不良を出さないために、品質管理の面では全数目視検査をしていますが、その工程についてロスがあるという状況でした」(白瀬氏)。


「失敗コスト改善」と「品質コスト管理」、それぞれチームを作り、白瀬氏がリーダーに就任。ジェムコからは2名のコンサルタントが参加し、月に2~3回程度集まり、活動を行っていきました。



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チームリーダーを務めた白瀬氏



「失敗コスト改善」
不良の情報を集め、徹底的に分析を行う



「失敗コスト改善」チームの取り組みとしては、不良によっておこる損金を減らすということ。コストの30%程度の改善を目標に、部署から代表して11名程度が参加することになりました。


「ジェムコのコンサルタント・大槻さんからは、不良損金のワーストではなく不良トレンドとして『異物』『カケ』などの項目ごとに分類するようアドバイスをいただきました。その中で損金が大きく、原因解明で苦慮している課題上位5つから、改善に向けた取り組みを行うことにしました」(白瀬氏)。


改善に向けた基本的なステップは、下記の通りです。



①情報収集・傾向分析・不良モード分析


②仮説設定(不良発生メカニズム検討)


③仮説検証(実験)


④実証(対策検討)


⑤歯止め(再発防止)



取り組みは、「異物」から行うことになりました。不良の中でも8割を占め、損金が大きくなっていたからです。まずは異物の事例を集め、大きさ・深さ・位置を徹底的に見て、分類しながら分析していくところから始めました。


「どんな手法を使って分析していくかについては、最初に議論もありました。『この異物についてはKT法を使おう』というように、大槻さんからは、さまざまな分析手法も教えていただきました。分析方法を知ることも大変有意義でしたので、今回の取り組みに関わるメンバー以外にも知ってもらおうと、大槻さんに講義を開いてもらったこともありました」と白瀬氏。


髙橋氏は、「分析については、さまざまな角度から徹底的に行っていきました。今回の取り組みを通じて、これまでの分析は少し甘い部分や、固定概念があるのではないかと感じるところもありました」というように、これまでの業務の方法を見直すいいきっかけにもなったようです。



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取締役 髙橋氏



「失敗コスト改善」
これまでの思い込みは捨てる! 思いつく限り仮説を立てる



髙橋氏が「固定概念があるかも」と感じた理由として、同社が100年を超える歴史がある企業だということもありました。「長い歴史の中で培われてきた経験をもとに、『これはこうだろう』『今までこれで対策ができていた』と、固定概念を持って考えてしまう部分はあったと思います。確かに、やればそれなりの効果が出るのですが、しばらくすると再発することが。実際には不良をつぶし切れていなかったわけです」と髙橋氏。そこで、一度これまでの思い込みを捨てて、新たに少しでも思いつくもの・考えられることを仮説とし、それを検証するということを繰り返しました。


その中でコンサルタントの大槻が提案した考え方が、仮設を立てていくうえで大きなヒントとなったようです。「大槻さんは『一つの不良を出すにはどうしたらいいのか?』という考え方を教えてくれました。どうやったらその不良ができるのか、という考え方はこれまでしたことがなかったので、新鮮でした。それをどうやってつぶしていくか、一人ひとりが仮説を5つくらい立て意見をすり合わせていきました。一人の意見で結論をだすのではなく、メンバー全員が意見を出し合い、それをまとめていく仕掛けをしていったので、コミュニケーションも活発になったと思います」と白瀬氏は振り返ります。




「失敗コスト改善」
不良率が下がった! 効果が出ることが次の課題への原動力に



不良改善については、取り組みの最中から一つひとつの課題について成果が目に見えてわかるようになったようです。髙橋氏も「一つ目の異物という課題について、不良率が“数パーセント”から“0.数パーセント”まで下がるという大きな効果が出ました。それは、『自分たちはここまでできる』という大きなモチベーションになり、他の課題に取り組む力になったと思います」と成果を振り返ります。


異物をはじめ5つの課題について、それぞれ2か月かけて取り組み、1年間を通した効果としては、活動対象の中での損金の削減率は7割を超え、数千万円の削減という結果になっています。



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事務局の運営も担われた品質保証統括部部長 横山氏



「品質コスト管理」
作業をビデオ撮影・分析 効率的に作業ができるマニュアル作成



並行して、「品質コスト管理」チームも始動。メンバーは4~5名で行われました。活動はまず、品質チェック工程を確認するところから始まりました。


「コンサルタントの川口さん指導のもと、品質チェック担当者全員の作業を録画し、一つの工程にかかる時間や手の動き、確認する順番などをチェックし分析しました。全員の作業を比較し分析すると、例えば作業が早い人と遅い人で何が違うのかなど、理由が分かってきました」と白瀬氏。


このような分析の結果、自己流ではなく、ある程度チェックの方法を統一することで、ロスも削減できるだろうということに。分析した結果をもとに、マニュアルを作成することになりました。


また、できたマニュアルについても、そのまま使ってもらうのではなく、品質チェック担当者を集めて、白瀬氏が使い勝手についてヒアリングしたのだとか。その中では、普段聞くことができないような“本音”もたくさん出てきたようで、「『本当はこのように作業している』『こうしたほうがより使いやすいマニュアルになる』といったような声がたくさん出てきました。そのような“生の声”を反映して、よりよいものに作り直していきました。“マニュアル作った!”という自己満足ではなく、本当に業務で使えるものを作らないと意味がないですからね。現在、その時に作ったマニュアルをもとに作業をしてもらっていますが、半年以上経過しても全く問題は起こっていません。担当者の皆さんも、チェックがしやすくなったみたいで、モチベーションも上がっています」(白瀬氏)。


この取り組みは、他の工場でも展開も目指しています。




次世代のメンバーを育て
全社的な活動にすることが今後の課題



今回の取り組みについて、白瀬氏は「メンバーのおかげもあり、いい成果を出すことができました。今後は、次のメンバーにも育ってもらっていかないといけないと思っています」と言います。


髙橋氏も、「ジェムコさんの力をお借りしたが、当社の中でもこれだけ“改善できる力”が眠っているんだということを改めて感じました。それを呼び起こしてくれたのが、白瀬であり、また、メンバーのみんなだったと思っています」と、取り組みの成功を実感しているようです。


今後は、「この取り組みをいかに全社的なものにしていくか」ということが課題とのこと。「原町工場ではまたジェムコさんのお力をお借りしていますが、岩槻工場の他の部門や加須工場でも同様の取り組みをしたいと考えています。白瀬と頭を悩ませているところです(笑)」(横山氏)。




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