JEMCO通信

隣の工場

“【隣の工場】での活動苦労談”(2)

文責:ジェムコ日本経営 コンサルティング事業部 古谷賢一

 

コンサルティングを行っていると、改善活動に消極的な人が必ずいるものです。

消極的であればまだマシな方で、積極的に否定をする人もいるのが現実です。

しかし、あるタイミングをきっかけにガラっと考えが変わり、改善活動に積極的な姿勢へ転じることもあります。

そういう瞬間に出会えることは、コンサルタント冥利に尽きる思いです。

 ある会社での印象的な出来事を紹介しましょう。

規模の大きな化学メーカーで現場の5S活動を行った時の事例です。業界でもトップクラスの生産を誇る工場でしたが、それに満足することなく、さらなる競争力の強化を目指して、ものづくり力の基礎体力を徹底して強化するべく5S活動に取り組んだものでした。

しかし、足もとの職場を見ると、紙袋に入った粉体や、ドラム缶に入った液体などを多用するために、特に設備の周辺は、垂れた液まみれ、舞い散った粉まみれのひどい状態でした。長年そのような職場であったので、工場で働く多くの人たちにとって、それは普通の姿でしたので、誰も問題とは思わない状態でしたが、コンサルタントが指摘を繰り返すことで「これではまずい」という意識が芽生え、活動が進むにつれて現場が徐々に綺麗な職場へと変わってゆきました。

しかし1箇所だけ、改善に後ろ向きの職場があったのです。設備の至る所から、水や蒸気、そして処理中の液体が漏れている職場だったので、コンサルタントは「まず、この設備を綺麗にしませんか?」と提案したのです。しかし、その返答は「綺麗にしても、どうせすぐ汚れる」、あるいは「設備のあちらこちらが老朽化しているが、修理の予算も無く、このままでしかたがない」と言ったもので、なかなか動いてはくれませんでした。

そうしているうちに他の職場は、どんどん活動が進み、見違えるように綺麗になり、同時に生産性や品質にも改善の兆しが見えてくるので、問題の職場だけが取り残されるような状態になってしまいました。

ところが、周囲の変化に危機感を覚えたのでしょうか、ある時、操業が無いタイミングを活用して、その職場のメンバーが自主的に、とにかく設備をピカピカにしようと立ちあがったのです。

そのあと少ししてからコンサルタントが訪問をした時、その職場のリーダーがやってきて、「設備とその周辺を綺麗にしてみました、すると、どこから液が漏れているかはっきり分かりました」、そして「一番漏れが激しい箇所も分かったので、今期、その箇所だけは修理をしてもらえるようになりました」と喜んで報告をしてくれたのです。

コンサルタントが、設備を綺麗にしたらと提案した理由は、ただ綺麗にするのではなく、綺麗にする事で、汚れや漏れなどの異常個所が分かりやすくなり、それによって設備保全にむけた行動を促したいと考えたのです。汚れまみれの設備では異常が見えにくいために改善活動の手が動かないのです。

この職場では、コンサルタントが狙っていたことを、彼らが自ら行動したことで気付いて頂いたのでした。その後、その職場の設備が再び汚くなることはありませんでした。


シェア
このエントリーをはてなブックマークに追加